寒いでせうし
又 おこつて 物しりの ところへ がなりこんで ゆくと、
「いや あれでは、耳が 寒いから いけない。」と いひます。なるほど さうだつたと 思つて、こんどは、二つの 耳に 長い 袋を かむせました。けれど びつこを ひくのは 前と 同じ ことです。いよいよ 物しりめ、わしを だましたなと 思つて、げんこつを ふりあげながら とびこんで ゆくと、物しりは、
「まちなさい、お前さん とんまだね、あれぢや 耳が 聞えないぢや ないか。」と いひます。たしかに さうだ、と、張は 家に かへりましたが、こんどは どう して いゝのか さつぱり わかりません。袋に 穴を あければ 風が はいつて 寒いでせうし――。
張は 十日も 二十日も ろくろく ご飯も たべず 考へましたが、よい 考へは うかびません。ある 日 とほりかゝつた 村人を とらへて、
「この 驢馬の 耳が 聞えるやうに するには どう したら えゝでせうな。」と きゝますと、その 人は、
「なんでも ないよ、帽子を とつて やりなさい。」と こたへました。
「こいつは 名案だ。」と 叫んで、張は 帽子を とつて すてました。そして、驢馬の 耳に 口を つけて、
「驢馬 やーい。」と どなりました。すると 驢馬は くすぐつたくて、耳を 二三度 ぴくぴく させました。張は それを 見て、
「やあ 聞える 聞える。」と よろこんで おどりあがりました。
